2023/10/22
2024年1月より実装されることが発表された新NISA政策。IFAのみならず、全ての金融商品の営業マンが恩恵を受けることができると思われる政策なのだが、本記事では特にIFAがより優位に利益を享受できることと、その理由について解説していきたい。
NISA政策とは、国民にNISA口座を設けることを推奨する一連の政策のことである。NISA口座から投資した際に上がった利益には、上限額までは課税がされない。政府はこのNISA政策によって、若年層を含む、国民の、投資による資産形成を促すことを目標にしている。
旧 NISAと新 NISAについて、概要は大きく変わらない。違いは、旧NISA口座においては課税されない上限額である非課税枠が一般NISAでは1年間120万円、積み立てNISAでは年間40万円だったのが、新NISA口座においては成長投資枠として年間240万円、積み立て投資枠として年間120万円の非課税枠が使えるようになったことだ。
先述のように、非課税枠の上限が大きく上がったため、IFAにしても大手証券の営業マンにしても、「非課税枠の上限まで投資してみませんか?」などと営業をかける際の期待値が上がった。しかしこれは全ての金融商品の営業マンに言えることで、I FAに限った話ではない。本政策におけるIFA特有の利点とは、転勤がない、という点である。これは積立NISAにおいて顕著な利点と言える。旧積立NISAで顧客が投資をする場合、少額かつ長期の投資となるが、これを転勤の多い大手証券の営業マンが担当していたらどうだろうか。長期(7〜10年)の投資なのに、 3年に1度は転勤してしまう大手証券の営業マンは、多くの場合、担当する顧客の投資の行く末を見届けずに転勤となるだろう。これは引き継ぎの面で深刻な問題となる。顧客からすれば、投資の期間中、担当者が2回、3回、あるいはそれ以上変わることになり、その度に、なぜその投資をしているのかなど、担当者の認識がリセットされることになる。こうなると取引は非効率になる一方である。一方、転勤の必要がないIFAに任せる場合は、このような心配はない。投資が完了するまで、同一の担当者から助言を受け続けることができる。ここが、NISA口座からの投資における、IFAの最大の利点である。
このようなNISA口座におけるIFAの優位性を活かすことで、またIFAのビジネスモデルを徹底解説で紹介した他の多くの利点も顧客へアピールすることで、IFAは大手証券の営業マンとの差別化を図っている。
とは言っても、全ての顧客が非課税枠を使い切るわけではない。非課税というだけで、投資が失敗した場合の損害は当然被るからだ。ここでやはり重要となってくるのが、IFAとしての実績と実力である。IFAの新規開拓のテクニックでも少し説明したが、実績をもつIFAは信頼されるものである。そしてその実績を作るためにはアドバイザーとしての実力が求められ、実力をつけるためには絶え間ない勉強が必要となる。実績によって信頼を得て、それにより案件を獲得し、実力によって確実に顧客に利益をもたらすことによってのみ、多くの顧客から非課税枠いっぱいの投資を任せてもらえるのだろう。
末筆となるが、このような大手証券特有の難点に頭を抱えている読者は多いだろう-お客様の利益を最大化できる商品よりも、新商品など、自社の売り出したいものを優先して売る傾向、地方に転勤となった途端に一変する生活(もしくはその不安を抱えながらの勤務)、成果を出しても年収への反映がイマイチ…といった点である。さらに、この記事(大手証券の未来が微妙という趣旨の記事を書きたいです)でも解説したように、大手証券はこの先、必ずしも明るい未来を迎えるとは限らない。そんな中優秀な読者のみなさんがIFAをはじめとした他業種への転職に今ひとつ踏み出しにくい理由は、やはり転職によって大企業特有の安定性を手放すことへの不安を感じていらっしゃるからではないだろうか。しかしIFA法人によっては、IFAを社員として起用し、固定給を支払う雇用形態も用意している。そのような法人へ転職すれば、年収の安定性もある程度担保しつつ、上で述べたような大企業特有の難点を全て完全に解決することができる。もちろん、自信がついてきたらインセンティブの部分を多く設定することも可能である。なんと取引で上がる利益のうち、70%がIFA個人に入るという形態もある。IFAとは、知名度こそまだ十分にないが、営業マンの理想に少なからず近づける職業であると言える。